夜の祈りのときのことだった。
カードをシャッフルし、手に取ったのは「INNOCENCE」。
月の光に照らされ、母と子のユニコーンが寄り添うその姿に、私は胸の奥が温かく満たされていくのを感じた。
カードに手を重ねると、ワンネスの扉が開いていく。
そこは一面に小さな花々が咲き広がる草原だった。
夜空には満月が浮かび、優しい金色の光が降り注いでいた。
花の香りは甘く清らかで、幼い頃に胸いっぱいに吸い込んだ空気を思い出させる。
私はその光景の中に立ち、心がすうっと澄み渡っていくのを感じた。
やがて白いユニコーンの親子が姿を現した。
母なるユニコーンは穏やかな瞳で子どもを見つめ、その角から放たれる光が子どもの額をそっと照らしている。
子どもは無邪気に跳ね、夜空を仰ぎながら星を追いかけいた。
その姿は、私の中に眠っていた「無垢な心」を呼び覚ますかのようだった。
私は気づいた。
私たちは大人になるにつれ、多くのことを学び、重ね、そして守る術を身につける。
だが、その過程で知らず知らずに手放してしまうものがあるのだ。
それが「純真さ」――ありのままを喜び、ただ世界を不思議に感じる子どものような心だ。
ユニコーンは私にそっと寄り添い、風のようにささやいた。
「無邪気であることは弱さではない。
無垢な心は、宇宙と響き合うための最も強く、最も透明な鍵なのです」
その言葉に、私は胸が震えた。
鑑定を通して出会う人々の中にも、きっとこの「無垢なる光」が息づいている。
不安や悲しみに覆われていても、心の奥には必ず、幼い頃のように純粋に信じ、愛し、夢を見る力が残っているのだ。
私は夜空を見上げた。
満月はやさしく微笑み、星々は子どもたちの笑い声のように瞬いていた。
その光景の中で、私は祈った。
「どうか、この純真さが、今夜出会ったすべての方々の胸にも息を吹き返しますように。どんなに大人になっても、心の奥にある子どものような光が、あなたを導きますように」
ユニコーンの子どもが近づき、私の手をそっと鼻先で触れた。
その温もりは、遠い記憶の中にあったやさしさと重なり、涙のような光が頬を伝った。
やがて私は再び自分の部屋に戻っていた。
胸の奥には、確かに「無垢なる光」が宿っている。
それはアカシックの記録の中に刻まれた、新たなチャプター。
「純真さを思い出した夜の物語」として、永遠に輝き続けるのだろう。
第2話 ― INNOCENCE「無垢なる光に抱かれて」
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